ACN 養殖用種苗生産速報

2007年9月~2007年12月出荷尾数、2008年1月~ 予測

<マダイ>
越夏種苗激増
2006年は9月~12月の4カ月で750万尾の夏越し種苗が養殖業者に販売されたが、2007年の販売は激減した模様である。大手種苗業者に聞いたところ「昨年の半分しか動いていないので自社で在庫している。今シーズンは各社とも減産せざるを得ないだろう」とのことであった。 主な原因は①成魚の対韓国向け輸出の減少による在庫増加-価格下落 ②高水温による成長遅れ等である。しかも2007年前半まで続いた高値相場の影響で種苗生産尾数は増加しており、その上イリドウイルス症等の疾病被害も限定的であったため、昨年11月時点では種苗業者11社で1300万尾の在庫を保持していたようである。
種苗価格下落
韓国向け輸出の低迷をきっかけとしたマダイ相場の下落は種苗導入意欲減退に直結した。種苗の販売価格も、当初13cmアップで浜値8~9円/cmと予想していた単価を7~8円/cm (一部では5円/cm)まで下げたにも拘わらず、まとまった動きは見られなかった。しかしながら12月に入りようやく昨シーズン並みに動き始め、業界関係者としては少しばかり胸をなでおろしているところである。
夏越し種苗いわゆる立仔(タテゴ)※とは別に昨年10月仕込みで年明けから販売のいわゆる春仔(ハルゴ)も8cmupにて愛媛県西海(にしうみ)方面への出荷が始まっている。 今シーズンの種苗生産数量については山崎技研、近畿大学では例年通りとの事であるが、現状の成魚価格の継続が懸念され、生産数量を減少させる業者がかなり出てくると思われる。
※マダイ種苗の呼称
マダイ種苗には種々の呼び方があり、立仔については夏越など飼育期間が長く大きな稚魚との共通認識はあるものの、その他の一番仔、ニ番仔、春仔、秋仔、早期物など業界での統一見解はない様である。ある会社では販売時期により「春仔」と「秋仔」の2種だけに分けていて明確で分かりやすいと思った。種苗の販売は一部地域を除けば真冬や真夏はないので、春から夏までに販売するものを春仔、秋から年末にかけて販売するものを秋仔と呼び、いつ仕込み(孵化時期)の、何センチ(サイズ)の春仔(or秋仔)と呼ぶそうである。他社の稚魚であれば、頭にどこ(生産者)のを付け加えればOK。

<トラフグ>
早期種苗低調
2007年9月~12月の種苗生産業者数は昨年より、2社増えたものの民間3社(近畿大学他2社)のみであった。
生産尾数は48万尾で年内の出荷は約5万尾であった。早期種苗を導入するための加温設備のある養殖業者は少なく今シーズンも4月以降に出荷が集中すると思われる。
その他の種苗生産業者は12月より採卵準備に入ったが年内採卵できたのは1社のみで、1月中旬~下旬へと遅れ気味である。
成魚価格年明け上昇
2007年シーズンは夏場の高水温・赤潮等の影響で成魚の成育は例年より1ヶ月遅れ、しかも愛媛県等ではヤセ病の被害が大きく在庫不足でのスタートとなり、中国産の輸入も減少したため久々の強気相場となっている。例年年明けと共に弱含みとなる価格も逆に200円/kg値上げとなり、出荷見合わせの業者も出ている様子である。熊本の養殖業者の話では「10年前にも同様の現象があり10,000円/尾で売れたが、20日後には下落を始めた。価格上昇は消費者離れの危険を孕むので適正価格が望ましい」との事であった。 サイズ別では700g~800gサイズの引き合いが強く加工用として多く取引きされた。キロ物の浜値は10月K@2,000円~、11月K@2,300~2,700円、12月K@2,700円~3,300円、1月k@3,000~3,500円と数年ぶりに単価が回復し、特に12月の白子持ちはK@4,500円前後での取引となった。

種苗引合堅調
中国産の輸入減少、単価回復を受けて最盛期の3月~5月には種苗の導入を昨年+20%で検討している養殖場もあり種苗の引き合いも活発になると思われるが、その一方では今の歩留まりでは経営が厳しい業者も少なからずあり、かつての熊本県のように一気にトラフグ養殖からの撤退という懸念も否定できず、慎重な種苗生産計画が望ましい。
中国情報
商社筋の情報では①昨年も中国では種苗生産は行われた ②日本の輸入検査及び中国側での輸出検査の強化により対日輸出が減少 ③対日輸出では養殖場経営困難 ④中国国内でのフグ食解禁を目指す動きがあるとの事であった。

<ヒラメ>
自家採卵種苗
2007年9月~12月のヒラメ稚魚の出荷尾数は、まる阿水産、長崎種苗など民間10社で昨シーズンと同じく約210万尾であった。受精卵を購入している業者では、仕込みが遅れたことなどもあり、思うような出荷が出来なかった。一方、自家採卵を行い予定通り仕込むことができた業者は出荷尾数を増やしている。出荷サイズは8cmUPで、浜値90円/尾。
種苗業者の大多数が昨年の生産尾数(歩留り)を上回っているものの、養殖業者の稚魚導入が遅れていることもあり、昨年末時点でかなり在庫していたものと思われる。
過去数年間ウイルス性出血性敗血症(VHS)の発生している地域では、11月に早期種苗を導入し、その後12月~2月を避け、水温上昇傾向となる3月中旬以降に8~15cmと異なったサイズの種苗導入する業者もいる。3年前までヒラメ種苗にVHS被害が発生した場合の補填を種苗業者に依頼する傾向があったが、他の養殖場では同じロットの種苗にVHSが発生していないことなどから、前述のように養殖業者自身が対策を講じるようになりつつある。
トラフグ種苗におけるヤセ病の発症についても地域性があり、ヒラメ同様に何らかの対策を講じなければ種苗業者も養殖業者も共倒れになってしまう危険性がある。

<シマアジ>
各社順調
昨シーズンは出荷種苗数260万尾と過去最低であったため、導入できない養殖業者もあったが、今シーズンはノグチフカが10月採卵したのを始め近畿大学、山崎技研の3社が300万尾販売予定にて沖出し完了し、順調に推移している模様である。別途マリーンパレスが昨年同様に1月に入って自然採卵している。

文中社名敬称略

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