ACN活動の紹介
「海洋サイバネティクスと長崎県の水産再生」 成果報告会
NPO法人ACN(アクアカルチャーネットワーク)
「海洋サイバネティクスと長崎県の水産再生」の平成19年度成果報告会が平成20年3月10日ホテルニュー長崎にて開催された。
本事業は,文部科学省の科学技術振興調整費「地域再生人材創出拠点の形成」に「海洋サイバネティクスと長崎県の水産再生」として採択されたものである。
長崎大学水産学部 中田 英昭学部長が事業総括責任者となり関係機関に加えNPO法人ACN(アクアカルチャーネットワーク)も参加し、長崎県の重要な産業である水産業・水産加工業を活性化させる人材を養成するために、新しい社会人教育のプログラム「海洋サイバネティクス・プログラム」を実施している。
第1期受講者は「増養殖コース」、「漁業管理コース」、「水産食品コース」の3コース合計で20名。海洋環境の保全、水産資源の育成・生産,水産物の加工・流通に関する高度で専門的な教育を受け、一定水準以上の修了者にはディプロマが授与される。
なお、事業の概要は以下。
課題の概要
○地域再生人材養成ユニット名 「海洋サイバネティクスと長崎県の水産再生」
○総括責任者名 「中田英昭」
○提案機関名 「長崎大学」
地域の現状と地域再生に向けた取組状況
水産業は長崎県の基幹産業(全国第2位の生産額)であるが、近年の海洋環境の悪化にともなって漁業資源が減少している。長崎県は水産業振興基本計画を定め、海洋環境、漁業資源、および漁港漁村の再生に取り組んできた。また県内の大学や国公設の研究施設の海洋研究分野の科学者・技術者の人的資源を最大限に生かし、平成13 年11 月から5年間、文部科学省・地域結集型プロジェクト「ミクロ海洋生物による海洋環境保全・生物生産に関する技術開発」に取り組み、引き続きマリンバイオクラスター事業を発足させて、長崎オリジナルとも言える独自の技術開発研究の実践を継続している。
地域再生人材創出構想
上記の取組成果を教材として生かすことにより、海洋環境の回復を通じて水産資源を育成し、長崎県下のブランド魚を加工・流通するプロセスの実践に貢献できる人材を養成することが本構想の目的である。2年間のカリキュラムを通じ、講義と実験によって「海洋サイバネティクス」教育、すなわち水産業上の諸問題について海洋生物学、工学、環境学等を融合させた集学的、多元的な教育を推進する。そのため「海洋サイバネティクス」の考え方と意義を教授すると共に、水産業再生に関わる現実の課題を題材としたPBL(問題解決型授業)方式による技術開発教育を行う。受講者は水産関連産業に関わる社会人を中心に、毎年10 名程度とし、短期集中で講義、実習を実施し、水産学部および大学院生産科学研究科の研究室での各種実験、水産学部附属練習船の余席利用による海洋環境観測を行うと共に、必要に応じて長崎県総合水産試験場の施設を活用した海洋生物育成やブランド魚の利用加工実習等に取り組む(3年目までに10 名、5年目までに30 名の養成を目標とする)。長崎大学は長崎県とNPO組織の協力のもとに修了予定者の到達レベルを判定し、水準以上の修了者にディプロマを与える。さらに、選定された重要課題の研究費申請や産官学連携研究を支援し、新たなシーズや実用化に繋げる。事業終了の5年後に産業界等から高い評価を勝ち取り、本プロジェクトの以後の自立的な運営を実現する。
自治体との連携・地域再生の観点
公設試を統括する科学技術振興課を窓口として長崎県が推進するマリンバイオクラスター事業との共同により、民間や自治体の水産関連分野の職員、社員を受入れ、技術的隘路となっている環境回復、資源育成、資源利用、ブランド魚の開発と加工・流通の諸問題に取り組む人材育成に努める。開発研究の実施にあたっては大学のほか、水産試験場、環境保健研究センター、工業技術センター等の県の公設機関で技術指導を受けながら、技術開発に従事できるシステムを準備する。開発研究課題は、長崎県を中心にした西日本の水産養殖関連の民間機関が会員であるNPO団体アクアカルチャー・ネットワーク(ACN)の協力を得て、地域再生のためのニーズを的確に把握するとともに、本ユニットの修了予定者のスキル評価を行い、再生への貢献度の高い水準維持を図る。