ACNレポート 年頭の挨拶
平成20年1月1日
特定非営利活動法人 ACN
理事長 田嶋 猛
食は文化-養殖魚は嗜好品
嗜好品:栄養摂取を目的とせず、好みによって味わい楽しむ飲食物
明けましておめでとうございます。平素よりACN各社が大変お世話になっておりお礼申し上げます。
世界的には水産物需要は旺盛であり、水産養殖業は成長産業であるとの認識ですが、日本国内では一部の魚種を除けば現状維持に大半のエネルギーを費やしているのが、ここ数年間の状況ではないでしょうか。このことは単に団塊世代が第一線から退きつつあり、そのために食料消費が減っているということで説明できるのでしょうか。
海産養殖魚類を流通業界の利益至上主義の道具として扱うのは間違いです。消費者が養殖魚類を食べる目的はその美味しさに満足するためです。ここ数年養殖エビのバナメイを国内外で食べる機会が増えてきました。残念ながら国産の養殖クルマエビと比べるとエビ本来の旨みのないものが増えてきています。聞くところによると海外のエビ養殖場ではキロ単価100円以下の配合飼料を要求されているそうです。これに対してクルマエビの配合飼料はキロ800円くらいです。心配なのは流通業者の利益が最優先され味の劣る水産物が売り場を席巻してしまうことです。生産原価の上昇を販売価格に反映できない業者が殆どで、養殖業を子供に継がせたくないという話をよく聞くようになりました。しかも日本は外国に水産物を買い負けはじめています。この状態が続けば一部のグルメ(食通)以外は美味しい魚介類を食せなくなってしまうのではないでしょうか。そのときは業界の川上から川下まで共倒れになるでしょう。食は文化です、文化を享受するのに、値切り倒しては品がありません。美味しいものにはそれに値する対価を支払わなければなりません。この業界の種苗生産及び養殖業者は生物学者でありマイスター(達人)でもあります。公的な補助に期待することは、抜本的な解決にはならないと思います。自信を持って自分の商品に自分で価格を付けて販売できるようにならなければ将来の発展は期待できないでしょう。