2013年アルテミア耐久卵の供給見通し
米国GSL産:バイオマスの収獲は順調
中国渤海湾産:減産と内需で日本向け減少
2013年2月28日
太平洋貿易株式会社
会長 田嶋 猛
2012年1月~12月に日本に輸入されたアルテミア耐久卵は49.5tで、内訳は米国産が41.4t(84%)、中国産が4.6t(9%)、その他が3.5t(7%)だった(表1、図1)。当初、米国グレートソルトレーク(GSL)産は高ふ化率の物が少なく、輸入量も減ると予測されていたが、結果的には過去5年間で最大の輸入量となり、ふ化率等の品質も安定していた。しかし、価格は前年比で約25%上昇した。一方、中国渤海湾産は内需拡大などから前年比60%の輸入量にとどまり、価格は米国産同様25%上昇した。ちなみに、過去10年間の日本の平均輸入量は約43tであり、GSL産が80%を占めている。
2012年10月以降の米国GSLの状況
昨年2月頃にはユタ州政府(Utah Division of Wildlife Resources)のwebサイトにアルテミアバイオマス(乾燥前の卵)の収獲状況が定期的に掲載されていたが、昨年後半あたりからその情報にアクセスできなくなっている。
そうした中で筆者らが入手した情報では、今シーズン(2012年10月~2013年1月)のバイオマス収獲量は約12,000tと、昨シーズンより約3,000t増えている。バイオマスからの製品収率は7~10%と幅があるようだが、日本のユーザーが最も重視するふ化率や分離等の品質については「昨シーズン同様」と伝えられており、実際にそうであって欲しい。ただし、価格については、円安要因だけで約15%の上昇となってしまう。
中国産渤海湾産の状況
高ふ化率の中国渤海湾産の収獲量は、沿岸地域の発展・開発に伴ってアルテミア養殖池の埋め立てが進んだため、著しく減少している。その上、中国国内では種苗生産・陸上養殖場が投資対象となり、種苗が増産されたため、アルテミア耐久卵の需要が急増、価格は高騰を続け、日本への輸出量は減少した。
最近になって、中国政府が国民に倹約を求めるようになり、これを受けて春節用に増産したターボットの価格が800円/kgと昨年の半値に下落しているとの情報も入ってきた。その通りであれば種苗生産意欲は一服すると思われるが、前述のように日本のユーザーが求める渤海湾産は絶対量が大きく減少していることから、値下がりは期待できそうにない。
今後の見通し
アルテミアは中国の青海省や中央アジアでも収獲されているが、それら地域での収獲量についても減少傾向との情報がある。一方、アルテミア耐久卵の世界需要は約3,000tと言われてきたが、魚食が世界的に広がり、それに応えるべく養殖エビや海産魚の増産が進んでいる。すなわち、アルテミア耐久卵の需要が縮減する可能性は低いので、引き続きその需給に注意しておく必要があろう。
最後に、関連情報として、アルテミア耐久卵に磁性を付与した新商品(鉄粉付きアルテミア)が2011年より日本国内でも販売されていることを紹介したい。この“卵殻部分に鉄化合物を付着させた耐久卵”を通常通りふ化器に収容し、ふ化後は用水ごと「セパレーター」に通せば、空の卵殻および未ふ化卵はセパレーター内の磁石に吸着されるので、ノープリウスだけを分離回収できるというものだ(写真1~3参照)。業界最大手のINVE社がその特許を保有しているが(特許公表2011-511642)、2013年からは独占販売ではなく、GSLの組合(Great Salt Lake Brine Shrimp Cooperative Inc.)所属業者も扱えることになった。ギリシャなど地中海沿岸の種苗生産場ではすでに70~80%がこれに替わったとの情報もあり、今後の日本での普及動向に注目したい。