太平洋貿易(株)代表取締役専務 浅田 雅宏(あさだ まさひろ)
収獲量は前年より大幅増
アルテミア耐久卵の最大産地である米国ユタ州グレートソルトレイク(以下、GSL)の複数の採取業者および輸出業者から収集した情報によれば、今期の収獲量は、豊漁だった昨年を大幅に上回るペースで推移しています。品質についても、この時点(06年12月25日)で結論づけるのは尚早ですが、収獲量が多いだけに、対日輸出に適う品質のロットも相応にあると思われます。
■採取業者組合による一貫生産体制が始動
06年10月1日が日曜日だったため、今期は10月2日が実質の解禁日となりましたが、以後の漁は順調に進んでいます。
今期の特徴の1つは、大多数の採取業者が「Great Salt Lake Brine Shrimp Cooperative Inc.」という組合組織を結成し、相互の連携を密にしながら、効率の良い採取・生産を図るようになったことです。GSLでの操業ライセンスの発給総数は79と言われていますが、そのうちの64ライセンスが同組合に集約されることになりました。そのうえで、収獲から精製までの一貫生産を行い、収益力を向上させようとしています。この組織が完全に機能し始めれば、アルテミア耐久卵の価格決定においても、かなりの影響力を発揮するでしょう。
■11月10日時点で前シーズンの総収獲量を突破
同組合メンバーも、これに属さない独立系業者も、今期は意気盛んで、積極的に漁に出ています。その結果でしょうか、収獲量は前年を大幅に上回るペースで推移し、11月10日時点で、昨シーズンのトータルのバイオマス収穫量*1(4,411t)を上回りました(図1)。その後は悪天候などから収獲ペースが落ちましたが、湖水中のシスト(卵)の量はまだまだ多いので、最終的なアルテミア耐久卵生産量でも昨年を大きく上回るものと思われます。ちなみに、直近の12月23日時点でのバイオマス収穫量は前年同期比189%となっています。
気になる品質ですが、現地からの情報によれば、「12月中旬時点ですでにダイアポーズ*2を終了したものもあるが、例年と比べて早すぎるため、そのロットについては高ふ化率は期待しにくいのでは?」とのことですが、なにぶん”母集団”が多いので、日本の需要(ふ化率90%以上の高グレード品で40?50t/年、表1参照)を満たすことは十分に可能でしょう。対日輸出が本格化するのは、例年通り2月末頃からになると思われます。
<備考:本文は湊文社発行アクアネット2007年1月号に掲載されています。>
*1:耐久卵、空卵殻、ゴミなどが混入した状態の水分を含む数量。精製すると数分の1になる。
*2:ふ化率向上のため、冬眠(発生休止)状態に置くこと。