2006年9月~12月出荷尾数、2007年1月~予測
<マダイ>
需要は堅調
2006年春以降導入された種苗は7月頃から各地で発生したイリドウイルス症により多大な被害を受けた。また種苗業者による夏越し種苗尾数は例年よりは少なかったものの業者によっては大きな被害を受け出荷尾数は沖出し尾数の数分の一というところもあった。イリドウイルス症による歩留まり低下、マダイの相場高騰の影響で、種苗業者によっては秋仔の生産を早め、立仔不足分をカバーしたところもあった。2006年9月~12月の出荷尾数は昨シーズンより25%減少しバイオ愛媛、山崎技研など民間11社合計で約750万尾、サイズは8~13cm、価格は8.5~10.0円/cmであった。
春仔は増産
2007年春以降販売予定で沖出し育成中種苗は約2700万尾があり、さらに、堅調なマダイ相場の継続を織り込んで、種苗生産業者の増産意欲は高いものとみられる。ただし、生産尾数の増加には、大手業者は現有設備での今以上の増産は無理があるため、過去に生産を休止又は縮小した中規模の種苗生産者に依るところが大である。
<トラフグ>
昨年同様早期物低調
年内(2006年10月~12月)のトラフグ種苗生産業者は近畿大学 1社となり昨年の9社から大幅に減った。
受精卵についても年内導入は引き合いのみで出荷はなく低水温期のトラフグ種苗の導入意欲の減退は顕著になってきている。年内生産尾数は60万尾で出荷は3万尾(陸上養殖向け)に留まった。早期種苗の需要は循環ろ過方式や温暖海域など導入地域が限定される上、1年後のサイズが7~800gで中国産と同型でバッティングするため今後も低迷すると思われる。したがって種苗出荷は3月以降に集中するものと思われる。
成魚価格暗転
成魚の出荷は9月から始まり、海面養殖物k 3,000円~、陸上養殖物 k 4,000円~と順調なスタートを切り10月上旬には海面・陸上ともさらにk 500円UPと続伸したが、11月に入るとポジティブリスト検査をパスした中国産養殖物の輸入が集中し国内産は瞬く間にキロ物サイズでK 1,500円台(昨年の4割安)へと急落しトラフグ養殖業者に危機感が広がった。
また、大手トラフグ専門チェーン店や加工業者が中国国内で、エラ・内臓抜きでの冷凍加工品を昨年までのルートを跳び越して直接買い付けしたこともあり、市場でのだぶつき感も出て急落に拍車をかける結果となった。
年末が近づき需要が出たところで中国産が減少し価格も手頃になり国内養殖物の引き合いは一気に活発となったものの相場はK 1,700円~2,000円と若干の上昇に留まった。
中国では内需が期待でき売価もトラフグより高価なメフグ等淡水フグ養殖の増加傾向の為トラフグ種苗生産は頭打ち状態で、国内の浜値も5cm/13円(1元)、200gサイズ/130円(10元)、500gサイズ/260円~350円(20元~27元)と下落してきている。また対日輸出対応のため検査等を考慮すると当面は国内で消費拡大を期待できないトラフグは中国の生産者にとって魅力の少ない魚種になりつつあるようである。
<シマアジ>
生産量減少
ノグチフカが早期仕込み分を年内に販売完了したのに続いて近畿大学、山崎技研が順調に生産している模様である。今シーズンの種苗尾数は出荷済みと2月下旬からの出荷予定分をあわせても150万尾しかなく種苗不足の可能性がある。したがって現在種苗生産準備中のマリーンパレスの生産動向が注目される展開となってきている。生産業者数は5社(民間4社・公共1事業場)である。
<アユ>
減少傾向
2006年のアユの生産量は廃業や規模縮小があり引き続き減少傾向にあると思われる。市場でのアユ価格は生産減少にもかかわらず安値傾向が続いている。昨年は後半出荷量が減少したことから幾分価格が上昇したが全体的には安値のままである。しかも飼料や発泡スチロール等資材の価格上昇で、厳しい経営状況が続いている。
導入時期を迎えている種苗の状況については、昨年11月に始まった琵琶湖の特別採捕は順調に行われ予定数量の40トンを採捕した。全体的にサイズが小さいため尾数は多いようであるが今後の歩留まりが生産量を左右するものと思われる。人工種苗については早期種苗が少なく導入は遅れ気味だが、種苗不足を懸念するような状況ではない。
このような状況から、今期の出荷は早期物の大量出荷はなく、中盤以降に出荷が集中するものと思われる。ともかく今期はコストアップに見合った売価アップが経営の鍵となるであろう。
<文中社名敬称略>