ハワイ島 養殖施設視察報告書 太平洋貿易(株) 田嶋 猛
本年7月、長崎大学水産学部萩原教授の案内でハワイ島(Big Island)の養殖施設を視察する機会を得たので、要点を報告します。なお、これらの養殖施設はコナ空港の隣にあるハワイ州立自然エネルギー研究機構が誘致した企業です。
【1】訪問先:KONA BLUE WATER FARMS
訪問月日: 2010年7月16日
面談者: Ms. Jennica Lowell/Research and Fish Health Manager
会社概要: ヒレナガカンパチを海洋深層水利用で親魚養成、種苗生産及び海面養殖をしているハワイ島唯一の魚類養殖会社。親魚はハワイ島周辺で確保。種苗を10cm(10g)でコナ空港沖合の沈下式イケスに入れ約10カ月養殖、2~3kg/尾で年間40万尾出荷。奇形魚の問題は徐々に解決中。生簀の浮上沈下は作業船エアコンプレッサーにより行う。
販売先: 米国本土90%、ハワイ10%
価 格: 卸6USD/kg、小売価格(スーパーマーケット)20USD/kg
イケス: 3,000m³×3基、7,000m³×1基
飼 料: 種苗用 オトヒメ、養殖用 スクレッティング
現場人員: 陸上 6人、海上 6人×2交代=12人 (ダイバー含む)
環境対策: 周辺 6定点の上、中、下層水の検査結果を3カ月に一度、州政府機関に提出。
【2】訪問先:BIG ISLAND ABALONE CORPORATION
訪問月日: 2010年7月16日
面談者: 新井 宏 C.E.O.
会社概要: エゾアワビの種苗生産、餌料用珪藻、紅藻、緑藻類の培養、養殖まで一貫生産する米国資本の水産会社の子会社(オレゴン州立大学の養殖技術による)。 現在、年間70トン生産のため設備拡張工事中。深層水価格1,000gal(3,785リットル)=21セント、すなわち 5円/m³、現設備での電気代 20,000ドル/月。親貝は日本から調達。国産や韓国産の養殖アワビでは、よく見かける貝殻の渦巻き中心部の独特の緑色は見られなかった。
販売先: 空輸にて東京(韓国産と競合)とホノルル(日本人観光客向けイベント用)
小売価格: 養殖場にて200gサイズ 11ドル/個(10個購入しホテルにて刺身で試食、美味であった)80gサイズ 4.5ドル/個
環境対策: 廃水は直接海には流さず、固形物の簡易ろ過後、酸化池で分解させながら、溶岩層に自然浸透させているようであった。