年頭ご挨拶

平成22年1月
太平洋貿易株式会社
代表取締役 田嶋 猛

2010年 国を挙げて養殖魚輸出奨励の年に

明るい話題の少ない養殖業界のなかで、50%以上の在池量を抱えて年を越すと、予想されたトラフグですが、価格低下の影響で12月後半に出荷が進みました。その結果、1月初旬の在池量は30%を切って予想より低くなっており、昨年12月に一気に2,000円/kgを切った価格も、底を打った感があります。しかしながら、日本の株式市場同様に上値は重く、一進一退で徐々に上向くといったところでしょう。トラフグ以外では昨年の種苗導入量が減少していたカンパチやヒラマサが堅調です。また、シラスウナギの不漁が続き、国内の在鰻価格だけでなく、台湾、中国からの輸入価格も上昇してきています。しかしながら、この業界での価格上昇の要因は、現物が減少したときの一時期のみで、一部の生産者は少しだけ潤いますが、業界の総売上高は増加しないという、まさに縮小を続ける市場の典型となっています。配合飼料メーカーにとっては、中国等の買い付けで魚粉価格は上がり、種苗生産業者にとっては加温用重油価格の上昇など、コストアップがあるものの、とても養殖生産者に転嫁できる状況ではありません。「仕入インフレ、販売デフレ」の継続で、資金力のない会社は淘汰されますが、ライバルの廃業をじっと待つ業界に発展はなく、縮小均衡の繰り返しとなります。
それでは、視点を日本の外に移してみると、どうでしょうか。中国は言うに及ばず、昨年末訪問した韓国済州道のヒラメ養殖業者は対日輸出への期待よりも、韓国内での販売を重視し、自信を持っていました。インドネシアやフィリピンも政治的な安定で、着実な経済成長が望めますし、ベトナム、カンボジア、ラオスが続きます。
こうしてみると、日本市場だけが、デフレという負のオーラが充満した、重苦しい雰囲気の中で、周辺国から取り残されて行きそうです。本来、養殖魚は嗜好品に属するもので、ハンバーガーや牛丼のように、満腹感を要求されるものではありません。したがって、それらと同じ土俵で価格競争をしても無意味ですし、品質を落とせば、若年層の魚離れを助長するだけです。
このように、嗜好品として正当に評価する市場の縮小に対しては、大間のマグロが香港の寿司屋にセリ落とされるように、海外に市場を求める以外はないと思います。
この数年間の荒波に揉まれた国産養殖魚は、肉質&加工技術向上とコスト低減で、欧米やアジアでの競争力を、着実に増してきています。このように技術力はありますが、海外へ突破する力は今一歩と思います。今こそ、政府は養殖魚輸出奨励のため、輸送技術、通関の簡素化、現地試食会開催等の具体案を策定して頂きたいと考えます。

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