ACN 養殖概況

2010年1月
<マダイ>
長引くマダイ魚価低迷は、一向に回復の兆しを見せず、2009年夏以降も下落傾向で推移した。夏から秋にかけ550~500円/kgだった価格は、年末には400円台に突入し480~450円/kgが主流となり、大型サイズでは400円/kg前後も聞かれるまでに下落した。この様な価格ではマダイでの養殖経営は困難であり、消費低迷、価格安により、マダイ養殖業界はさらに厳しい状況へ追い込まれている。2008年に比べると在池量は少なくなっているものの、現状では近い将来の好転は望まれず、生産量減、他魚種への転換など様々な変動が推察される。
2009年は、エドワジェラ症による斃死被害が依然として大きく、歩留り低下の最大要因となっており、本症の対応策が強く望まれている。高水温期のイリドウィルスによる発症は少なく、大きな被害は発生しなかった。新たな問題としてハダムシ寄生が多く聞かれるようになり、消毒作業などの負担が増えつつある。
マダイは飼い難く、売れ難い魚種となっており、景気回復、消費拡大が何より望まれるところである。

<トラフグ>
2009年は種苗導入時のシュードカリグス症や夏場の赤潮被害が一部地域であったものの9月以降は順調に生育している。
2008年末からの在池成魚が2009年3月に入ると1,500円/kgまで下がって、中国産と同価格となり、その多くが冷凍加工品として春までに潤沢にストックされた。
また、7月~9月には500g~700g/尾が途切れることなく市場に出た為、加工業者はいつでも国産の入手が可能となり、価格の上昇へ歯止めをかける結果となった。
本格シーズン開始の10月でもキロ物で2,000円/kgと弱含みな相場は、不景気に天然物の豊漁も重なり、11月には1,300円~1,500円/kgとなり、12月に入ると1,200円~1,300円、年末には1,000円/kgまで下げた。しかしながら、価格低下のため出荷は予想以上に進み、年明け在池量は25%といわれるまでになり、弱いながら上げ相場となってきている。
このように順調に出荷されたトラフグの多くは、一般消費に回り、残りは加工後冷凍保管されていると推測される。あるトラフグ外食大手は安い時に一年分を確保したとの噂もあり、今後の相場を見通す上で、冷凍品の在庫量がキーポイントになると思われる。

<ヒラメ>
韓国産成魚の大量輸入により2009年2月には800円/kgを割り込んでいた成魚相場(浜値)は、ウォンの上昇とともに4月以降回復基調となった。2008年9月~12月の早期種苗導入尾数(106万尾)が前年比の約5割であったことも影響して、2009年8月以降には品薄気味となり1,500円/kgまで回復した。しかし、国内のデフレと消費量減の影響は避けがたく、種苗導入尾数の大幅な減少や韓国産の輸入急増がないにもにもかかわらず、以後の成魚相場は1,200円/㎏前後と下げ気味である。
主産地である大分県では種苗導入尾数減少の影響と思われるが、エドワジェラ症、新型連鎖球菌症等の疾病被害は少なかった模様である。なお、数社がヒラメ以外にカワハギやトラフグを導入した。

●参考資料
韓国から下関港と大阪港に輸入された活魚は大部分ヒラメであり (月刊 養殖2008年4月号 19P)、2港の合計数量は韓国税関庁の活ヒラメ輸出量 (月刊 アクアネット2009年4月号 63P)ともほぼ一致する。図1は財務省貿易統計品目「その他の魚(生きているもの)」から作成したグラフである。輸入単価と国内成魚相場(浜値)がほぼリンクしており、韓国産ヒラメ輸入価格が国産に与える影響が大きいことが分かる。

<ブリ・ハマチ>
昨年のモジャコ採捕は、当初の4月中旬は不漁が続いたものの、5月下旬より小サイズを中心に良く採捕され、特に東シナ海側では近年にない豊漁となった。その一方で8月には長崎県、熊本県に続き鹿児島県で赤潮が発生し、ブリ2年生、3年生が大量斃死する被害が起きた。
魚病被害については、例年同様にレンサ球菌症、黄疸、ノカルジア症などの発症があったが、その中でもノカルジア症が以前より増加しているとの指摘があり、背景として魚価低迷による給餌制限や飼料の安値志向が影響しているのではとの見方もある。
生産物相場は天然ブリの豊漁やカンパチ価格低調の影響を受けて、昨年1月~5月にかけては600円台/kg前半の低価格で推移した。その後、6月頃より在庫品薄感とカンパチ価格の上昇に引っ張られて、ブリ価格も750円~800円/kgまで上昇したものの、10月以降は新物の安定供給や天然ブリの豊漁を受けて弱含み、年末には600円前後/kgとなった。
赤潮被害による在庫減は未だ生産物価格に反映されておらず、その他の養殖魚種同様に景気低迷の影響を受けており、今年もブリ養殖は引き続き厳しい状況が続くことが予想される。

<カンパチ>
例年では全国で約1,000万尾が導入されている中で、昨年のカンパチ導入数は、厳しい経営状況におかれている養殖業者の規模縮小意識の高まりと中国での大量斃死による供給不足の影響を受け、前年比2割減の約800万尾と言われている。
生産物相場は2009年1月時点にて720円/kg(鹿児島地区)であったが、経営改善対策として4月より産地主導による価格引き上げが実施され820円/kgまで上昇した。その後も、価格は徐々に上昇し10月に880~900円/kgとなったが、以後はブリ生産物価格の低下による影響を受け、横這いもしくは若干の下げ傾向となった。
この産地主導による価格引き上げの影響で、荷動きは鈍化傾向を示した。しかしながら一昨年の導入尾数が少なかったため、年末における在池量は品薄感があり、特に出荷最適サイズである3.5キロ物の不足の声が聞かれた。よって、年明けの相場は若干の上げ傾向となっている。
今後は品薄による強含みが期待されるものの、不況による荷動きの鈍さが懸念材料である。

<シマアジ>
シマアジの浜値は1,500円/kgで保合状態が続いており、相場が上下しているブリ、カンパチや、低迷が続いているマダイと異なり、養殖魚の中では特異的な存在になっている。
その一方で、他の魚種と同様に不況による消費低迷の影響を受け、市場での取引数量や価格は前年比割れの傾向となっている。安定した浜値を受けて種苗導入が昨年から増加しているが、この種苗が出荷サイズになる数年後は需要と供給のバランスが崩れることが予想され、養殖業者にとってもメリットが少ない魚種になることが懸念される。

<アユ>
2009年の東京市場への出荷量はほぼ前年並みであったが、平均単価は1,388円/kgと前年を約200円/kg下回った。特に後半の子持ちアユ主体で取り引きされる時期では前年比300~500円/kg安と大きく下げ、多くの業者が採算割れの状態となった。この原因としては、不景気の影響もあるが、それ以上に需要落ち込みが大きい事が考えられる。
現在各池では種苗の導入時期を迎えているが、琵琶湖の特別採捕は今回も方式が変更となり、昨年12月1日からの1回となった。採捕数量は、例年の40tより約10t少ない30tで12月上旬までに採捕し終漁した。種苗の状態は、全体的に小さいが、現在までのところ生育状況に問題はないようである。人工種苗は順調に生産され、各地に池入れされているが、一部では池が空く時期が遅れたことによる導入遅れがみられる。
このような状況に加え、廃業等もあることから、今期の生産量は、昨年以上の減少となりそうである。生産量が減少しても、この不況下では大幅な価格上昇は期待出来ないと思われる。そのため生産者には、疾病対策等歩留まり向上による原価圧縮と、新たな販売ルートの開拓が必要となってきている。

以上

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