年頭ご挨拶
平成21年1月1日
特定非営利活動法人 ACN
(アクアカルチャーネットワーク)理事長
田嶋 猛
2009年 生残りから持続的発展へ転換の年
新年明けましておめでとうございます。
読者の皆様方には平素よりACNの運営等にご協力いただき、厚くお礼申しあげます。
昨年秋以降、新聞紙面等で、サバイバビリティ(Survivability)とサステイナビリティ(Sustainability)というカタカナ言葉を目にする機会が増えてきました。 直訳では前者は「生残可能性」後者は「持続可能性」ですが、元来サステイナビリティ(持続可能性)という言葉は「水産資源を如何に減らさずに最大の漁獲を続けるか」という水産資源評価の専門用語でした。水産業界では常々見てきた、「持続的養殖生産」とか「持続的水産資源保全」などの用語が経済用語として幅広く用いられるようになり、世界同時不況の情勢にぴったりの言葉となってしまいました。 1990年のバブル崩壊後、失われた10年を過ぎ、日本もようやく好景気の仲間入りをした最中でも、水産の漁労、養殖に携わる企業は好況とは無縁で、ここ10数年はサバイバビリティ「生残可能性」とサステイナビリティ「持続可能性」にしのぎを削ってきました。
一方、好況を謳歌してきた業界では、拡大路線から方針を180度転換して「会社生残」や「維持」のために雇用の削減、設備投資見直し、企業買収の中止等、何もかも一気に縮小し始め、前述のカタカナ言葉が新聞紙面に賑わしている状況です。 このことが消費の減退を引き起こし、円高ウォン安の影響は韓国からの輸入ヒラメは激増、輸出マダイは激減という養殖業界にとっては泣きっ面に蜂の状況の一因となっています。 しかし養殖業界のこの不況は今に始まったことではなく10年来継続しているので、現在生き残っている企業は昨年まで続いた世間の好景気を知らない分、逆に苦境に強い企業ばかりで、人員整理もせずに粛々と経営を継続していくことと思います。 海面養殖業の経営数は、減少しているものの魚類収穫量は、この10年間26万トン前後で大きな変化はありませんでした。
これまで腰を屈めて、じっと耐えて来た養殖業界は食料自給率向上という大きな潮流の中で中核的な位置を占めることは間違いありません。 海岸線の長さではオーストラリア、アメリカ、中国よりも長く世界第6位の日本には恵まれた養殖場がたくさんあり、養殖魚類は輸出商品としても有望です。
いよいよ時期到来、これから養殖業は右肩上がりの産業となっていくことでしょう。