<マダイ>
2008年当初より低迷が続いた成魚価格は秋以降になりさらに悪化し、マダイ養殖業界に大きな打撃を与えている。
2007年5月をピークに国内相場を反映して輸出価格も下がり始め輸出量は2008年5,250トンと過去最高(表1)となったが、世界同時不況によるウォンの大暴落は、マダイ輸出代金未回収問題等を引き起こし、対韓国輸出は11月から激減している。 このことは国内の荷動きにも少なからず影響し、成魚価格も下降を続け、浜値は500円/kgを割る状況である。 価格安にも関らず成魚売れ行きは不振を続け、例年に比べ在池を多く抱える状況が続き、給餌調整による生産抑制や種苗導入の再検討など、今後の養殖計画を見直す動きも多く見受けられる。 国内及び世界の景気回復見通しなど先行き不安が続くことから、この動きは加速するのではないかと推測される。
2008年のマダイ養殖の育成状況は、高水温期のイリドウィルスによる大規模な被害は無かったが、代わって夏以降期にエドワジエラ・タルダによる影響が多く発現した年となった。 当歳から出荷サイズまで幅広く発病し、終息にも苦慮することになった。 先述のようにマダイ養殖を取り巻く状況が厳しいことから、疾病の影響以上に成魚販売不振、生産コスト増が深刻な問題となっており、2009年のマダイ養殖は、大きな変動が起きるのではないかと推察される。
<ヒラメ>
2007年秋から徐々に下落傾向であった価格は2008年夏には浜値1,250円~1,350円/kgを維持していた。 韓国からの輸入は減少傾向(表2)にあったものの、10月の急激なウォン安を受けて輸入量は激増し、価格も史上最低記録を更新中である。 価格暴落の一因として韓国産ヒラメの輸入販売の新規業者の参入と一部の韓国養殖業者の資金繰りのためのコスト無視の日本向け出荷が合致したことが挙げられる。 各地の日本市場で800円/kgで販売され、このことがさらに国内の生産者の経営を圧迫している。
魚病は例年のように低水温期のVHS、夏場の高水温期には新型の連鎖球菌症が多く見られ、歩留まりは2007年より更に低下し、特に生産量第一位の大分県の被害が大きいことが懸念される。 歩留まり低下のため、例年に比べて成魚の在地数は少ないのだが、それ以上に韓国物の流入量が多く国内物の荷動きがいつ改善するか見通しが立たない状況である。
<トラフグ>
2008年は年明けから稀に見る上げ相場で始まり、種苗の導入量も多く、夏場の高水温・赤潮等での大量斃死の報告も少なく順調な生育状況であった。2008年は価格高騰を受けて外食チェーン・加工場向け等で700~800gサイズの引き合いが強く、逆に1.5k upは敬遠された年であった。但し、白子持ちはサイズに関係なく引き合いは強かった。
価格は10月キロ物で浜値K@3,500円~から始まり、11月K@3,800~4,300円と高値で推移したが(2007年11月K@2,300円~2,700円)、11月後半になると荷動きが低迷し始め、12月中旬はK@2,700円~2,900円となり2007年同期よりK@で300円~400円下がる結果となった。 相場の下げ予想から年明け出荷に嫌気がさし12月に出荷が集中したが、完売にいたらず流通業者が年越し在庫を抱える結果となった。 1月中旬時点の養殖場での在庫は約140万尾(2008年導入稚魚は除く)に達するものと推測される。(長崎県 約70万尾 四国約40万尾・熊本県・その他で約30万尾)
年明け浜値は在庫過剰もあり、キロ物でK@2,500円~2,700円に下がりその後下げは止まらず1月末までにK@2,000円を割り込みそうな勢いである。昨年とは逆の展開でトラフグ養殖業者にとっては厳しい年になりそうだ。
中国からのトラフグの輸入(表3)は2004年をピークに減少傾向にはあるものの、着実に輸入されている。
<ブリ・ハマチ>
ブリ浜値は品薄感から2008年5月後半より上昇し、一時は850円/kgにまで達した。しかし、この価格上昇による需要の低下や天然物の豊漁などが起因して販売は振るわない状況が続いた。その後、年末には天然物の入荷が切れたことも後押しして5kgサイズを中心に販売状況は回復に向かったが、浜値は弱含み鹿児島地区にて580円/kgにまで下落した。
また、2007年は生餌価格が高騰したため低水温期におけるEP飼料の使用が一部地域で急速に広まったが、2008年秋頃から価格や供給状況が以前の水準に戻りつつあり、再びMPの比率が増加している状況にある。
<カンパチ>
2008年は春先の出荷サイズ品薄により、浜値は5月~6月に950円~970円/kgまで上昇した。 しかし、この価格上昇により消費サイドの需要が低下し、連動して浜値も下落。年末には動きが悪い中720円/kgにまで低下した(鹿児島地区)。新年を迎えた現在も依然として販売状況が厳しく、相場回復の見通しはたっていない。
このような状況から今春のカンパチ稚魚導入尾数は前年比減が予想されている。養殖現場ではこの難局を乗り切るために、生産歩留りや飼育技術の向上が今まで以上に問われる勝負の年となりそうだ。 2008年末からの生餌、資材、燃油の価格低下傾向等の朗報はあるものの、生産業者の経営力も限界にきており、早急な相場回復が望まれる。
<シマアジ>
ブり、カンパチ等青物価格が低迷している中で、唯一シマアジ価格はキロ物では1,500円/kgを維持している。ここ数年間種苗の供給尾数は300万尾前後で安定しており、このことが市場での品薄感になっているのではと推測される。
<アユ>
平成20年度のアユ生産量はまだ発表されていないが、市場への出荷量が昨年を下回ったことから生産量が減少したと推測される。 それでも市場の価格は昨年並みであり、需要が落ち込んでいることが分かる。 また、冷凍アユは昨年度に引き続き不足状態が続いている。 それでも価格は高くなっていないため、新たに冷凍アユを生産する業者はほとんどいない状態であり、今後もこの不足状態は続くものと思われる。
現在各池では種苗の導入時期を迎えているが、琵琶湖の特別採捕が今シーズンは2回に分けて行われている。1回目は昨年11月25日から始まり、予定数量の約30tを12月上旬までに採捕し終了した。 2回目は1月20からの予定で約10tを採捕予定。 種苗の状態は、既に冷水病が発症している池もある。 人工種苗は順調に生産され、各地に池入れされている。
このような状況から、今期の生産量は廃業等により若干の減少となりそうである。また冷凍は今期も不足傾向で推移する見込である。 価格面は、不況の状況下で急激な上昇は期待できず、むしろ需要の減退から安値で推移する可能性もある。 そのため生産者は歩留まり向上で原価の圧縮をどこまで図れるかが鍵となってきそうである。
以上