2006年アルテミア耐久卵の需給動向
グレートソルトレークの現況
2005年12月12日 浅田 雅宏(太平洋貿易株式会社)
アルテミア耐久卵の最大産地である米国ユタ州グレートソルトレイク(以下、GSL)の複数の採取業者などから収集した情報によれば、今期は前年以上の収獲量が期待できそうな一方で、品質については現地でも見方が分かれているようです。
■親アルテミアの生育環境は良好
DWR(ユタ州野生動物資源管理部門)発表による2005年12月6日までの収獲量は下表の通りで、前年同時期と比べ「やや増」といったところです。湖水1?あたりの浮遊シスト(卵)数は前年より少ないものの、“一時禁漁”を要するレベルとは思えませんし、前年上昇した湖水の塩分濃度も下がり、天候も比較的安定しているので、収獲量は今後さらに増え、シーズントータルでも前年を上回ると予想されています。一方、品質については、例年同様、「現時点ではまだ判らない」というべきでしょう。
ちなみに、前シーズン(04年10月?05年2月)は夏場の小雨で湖水の塩分濃度が親アルテミアの生存限界近くまで上昇し、それに伴う不漁と品質低下(湖水の浮力が増すことで湖底の古い耐久卵が浮上し、新しい耐久卵と混ざる)が懸念されながらのシーズンインでした。また、12月以降は荒天が多く、さらに上記予想などから最大手の採取業者が操業を見合わせました。結果は、シーズン末までの収獲量では03年シーズン(03年10月~04年2月)を上回ったものの、漁期後半の収獲分についてはやはり品質低下が見られました。しかし、10月1日の解禁から約10日間の収獲量は03年を上回り、しかも高品質でした。このため、日本へ輸出された製品についても、供給元(採取業者)による品質差が大きいようです。
■現時点での品質評価は尚早
05年産の耐久卵の品質については、現地関係者間で「良い」とする向きと「悪い」とする向きとがあり、前者は「前年と比べ、湖水の環境条件が良くなった」ということ、後者は「昨冬の荒天から雪解け水の流入量が多く、湖底の古い卵を巻き上げた」ということが根拠となっているようです。また、こうした科学的(?)な分析以外に、自社の在庫量(十分ある場合もない場合も)を背景とした経済的・恣意的発言も聞こえてきますが、本当のところは、“休眠期間後の最終製品”でのふ化試験を待たないと、つまり2月頃までは判らないと思います。個人的には「総量が増えるのであれば良品も多少は増えるだろう」と踏んでいますが、「ではその良品のレベル(ふ化率)は“04年の初期物”と比べてどうか?」と問われれば、その判断材料はなく、答えに窮します。
■採取業者間の価格協定強化?
GSLでの今期の操業状況をみると、大手業者は所有するライセンスの半分程度しか使っておらず、小規模業者のなかには操業を見合わせたところもあるようです。わずか数年前には、高単価を当て込んだ多数の採取業者がゴールドラッシュのごとくひしめき合って操業していたわけですが、その結果、耐久卵の市場価格は彼らの不採算ライン近くまで下落しました。そのため以後は“採取努力量”がセーブされるとともに、採取業者間の価格協定を強化しようとする動きも出てきているようです。けれども、採取業者それぞれのポジション(在庫の多寡など)があることから、どこかの国の「構造改革」と同様、総論賛成・各論反対となるのは必至で、実現するとしても2~3年はかかるでしょう。実際、この件についての各業者の発言内容はまちまちです。
<備考:本文は湊文社発行アクアネット2006年1月号に掲載されています。>