養殖用種苗生産速報 -2002年9月~12月 中間速報- ACN総評
■マダイ
成魚の動き悪く稚魚販売苦戦
成魚は、昨年夏頃より動きが極端に悪くなり、価格が下落したまま越年した。
年明けでキロ物浜値500円を切るのでは?という最悪の状況である。
昨秋の稚魚(※たて仔、秋仔)の販売はこのような状況の下で底値の知れない乱売合戦となった。養殖場への導入尾数はたて仔が一昨年より約250万尾増の約900万尾、秋仔は一昨年より若干減の200万尾であった。(注:たて仔900万尾には買い手が未定のまま取りあえず種苗場から出荷されたものも含まれる。)
昨秋のたて仔在庫は越夏歩留まりが良かったため一昨年を上回る約1500万尾であった。浜値は10月下旬より8~10円/cmでスタートしたが11月になると3~4円/cmのという超安値物が全体の価格を押し下げる要因となったがそれでも荷動きは悪く、14~20cmのたて仔が在庫として約600万匹前後あると思われる。秋仔はたて仔の影響で数量・価格とも昨年を下回り6cmup9~10円/cmで一部販売されたがいまだ種苗業者で在庫している物もある。
稚魚の出荷は成魚の動き次第であり浜値の下がった今、消費の増大に期待が持たれる。
※たて仔:夏越し稚魚 秋仔:お盆以降に孵化した稚魚と区別した。
中国のマダイ流通サイズは500g/尾が中心であり、キロ物は主に韓国に活魚輸出されており、日本から韓国へは2kgUPの大型サイズだけとなっている。中国産マダイ活魚は昨年日本にも輸入されたようである。福建省 浜値は約300円/kgとのこと。
■ヒラメ
成魚の動きが悪く種苗導入意欲は低調
昨年9月以降の早期物は近畿大学の約30万尾の出荷にとどまり低調な滑り出しであった。他社の不調の原因は腹部のへこみや尾柄部の寸詰まりの奇形、更にVNN症による斃死等であった。しかしながら、11月になるとまる阿水産、長崎種苗など10数社が順次出荷していった。早期種苗生産については瀬戸内海方面が苦労したのに対して九州方面は比較的順調であった。成魚は昨年9月頃品薄になり価格上昇の期待が持たれたがその後は値下がりしキロ物浜値1100~1600円/kgで推移しており荷動きも今一つである。
2002年9月~12月:稚魚出荷尾数は約29万尾(民間業者数15社)
サイズ:7cmup~8cmup、浜値:85~60円/尾
中国では北方の山東省、遼寧省でヒラメが陸上養殖されているが、より低水温での養殖に適し、しかも加熱料理に適したターボットの養殖に移行してきている。
■トラフグ
年内出荷の超早期種苗に一服感
昨年12月までの超早期物はバイオ愛媛他2社の約40万尾の出荷にとどまり一服感があるものの、陸上養殖の早期物需要が年明けから3月まで見込まれる。
海面養殖の中心地は熊本県から愛媛県に、そして一昨年は長崎県へと移り変わってきているものの、どの漁場でも寄生虫に苦慮しており抜本的対策法の確立が急務である。トラフグの陸上養殖はヒラメを一部トラフグに転換している場合がほとんどであるが海面養殖より管理が容易であるため徐々に拡大している。
昨年12月までの超早期物の浜値は95~100円/尾、サイズ5~6cm
中国では北方の渤海湾沿岸地域で生産した稚魚・中間魚が南方の福建省で中間育成・養殖され始めており今後は中国物の中間魚は周年輸入されるものと思われる。
■シマアジ
他魚種人気が今一つのなかシマアジ種苗に人気
カンパチ、ブリ、マダイが価格を下げていく中でシマアジ価格は堅調に推移したためシマアジ種苗に人気が出ている。年末までに起き出し完了した3社とも順調に仕上がっており2ラウンド目を予定している業者もある。親魚を保有していない業者は種苗生産できないことが制限要因になっており結果的に需給バランスが程良く保たれている。イリドウイルス症ワクチンがシマアジにも認可されたことも養殖に好感が持たれている。
■アユ
人工種苗の比率が増加する中、湖産にも根強い人気
全国的に採卵が一昨年より1~2週間遅れ、人工種苗の年内の出荷が一部年を越したものの、大きなトラブルも無く生産完了。
人工種苗の需要が増加(全体6割強)しているもの湖産にも根強い人気がある。
海産稚アユ年明けになってもほとんど取れておらず、今後の動向が気がかりである。
<敬称略>